今回のテーマはアルブミン。
栄養評価の指標のひとつとして一般的に使用されていますね。
血清アルブミン値は、炎症反応の有無や血管透過性の亢進、体液変動などに影響を受けて変動するため、アルブミン単独では正確な栄養状態は評価できないことはよく知られています。
それを踏まえた上で、栄養状態の目安にしている、という施設は多いと思いますので、
勉強がてら調べた内容を共有します。
血液検査データ(アルブミン・グロブリン)について
血液は、血漿と血球成分(赤血球・白血球・血小板)で構成されています。
血液=血漿(55%)+血球(45%)
血漿には、蛋白質(アルブミン、グロブリン、フィブリノゲンなど)の他に、糖質、脂質、無機塩類(Na⁺、K⁺など)、水、老廃物(尿素、クレアチニンなど)が含まれています。
血清アルブミン
血漿中の蛋白質の総量を総蛋白(TP)と呼び、総蛋白の約2/3を占めるのがアルブミン(Alb)。
アルブミンは血漿中に40%、血管外(細胞や組織間液)に60%存在しています。
アルブミン以外はほとんどがグロブリン(Glb)のため、以下の関係が成り立ちます。
総蛋白=アルブミン+グロブリン
アルブミンもグロブリンも肝臓で合成されます。
血清グロブリン
グロブリンの主な働きは、防御タンパク質としての免疫機能。
IgGやIgMなどの抗体に代表される免疫グロブリンが主な蛋白で、種々の炎症で増加します。
そのため、単純にいうと
総蛋白=栄養指標(アルブミン)+炎症指標(グロブリン)
と考えることもできます。
グロブリンの算出方法
グロブリンはたくさんの蛋白の集合体。
血液検査で直接調べるより、以下の計算式を用いた方が手軽に算出できます。
グロブリン=総蛋白-アルブミン
A/G比
臨床現場でよく目にするA/G比は、アルブミンとグロブリンの比のこと。
A/G値は低下に注意!
A/G値の低下は、アルブミン低下かグロブリン上昇のいずれかでおこります。
ひとまずA/G比の低下があったら、
アルブミンが減少して栄養状態が低下している?
グロブリンが増加して炎症状態が長引いている?
のいずれかまたは両方を疑っておくと良いかも。
ちなみに、アルブミン低下とグロブリン上昇が起こる背景には以下のようなことが考えられます。
アルブミン低下の原因
栄養因子以外で考えられるのはこんな感じです。
肝機能障害による低下:アルブミン合成能が低下する。この場合、肝胆道系酵素(γ-GTP・ALT・AST)の上昇やコリンエステラーゼ・総コレステロール・血小板の低下など、肝臓で合成されている物質は異常値になります。
炎症反応による低下:体のどこかで炎症が起こると、炎症部分局所でアルブミンの消費が増大します。また、肝臓でアルブミン以外の蛋白合成が盛んになるのでアルブミン合成が低下。血管透過性が亢進するので、せっかくのアルブミンも血管外に出ていってしまう(間質内へ移動)など、アルブミン値が低下します。手術後や感染などの侵襲が加わる状態では、アルブミン値が急速に低下することがあります。
蛋白質の喪失による低下:ネフローゼ症候群・腎不全(腎臓から尿中へ蛋白漏出)、蛋白漏出性胃腸症(小腸から便中へ蛋白漏出)、広範囲熱傷(体表面から体外へ漏出)、胸水・腹水貯留(体内へのアルブミン貯留)など
蛋白質消費量増大による低下:甲状腺機能亢進症(バセドウ病)(アルブミン代謝(分解)が亢進)など
肝臓・腎臓・甲状腺の影響も受けるんですね~
その通りで、アルブミンだけでは臨床的に何も判断できないのよ~
グロブリン低下の原因
肝疾患、栄養不足、自己免疫疾患、遺伝性疾患(無ガンマグロブリン血漿)、悪性腫瘍、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫などが考えられます。
ちなみに、グロブリンが上昇する原因は?
多発性骨髄腫、悪性腫瘍、膠原病(関節リウマチ等)、慢性感染症、原発性マクログロブリン血症など により免疫グロブリンが異常に合成されます。
多発性骨髄腫や悪性腫瘍、自己免疫疾患は、上昇・低下のどちらの要因にもなるようです。
総蛋白(Alb+Glb)が上昇しているなら、慢性炎症はないか?脱水で血液濃縮が起こっていないか?などひとまず疑ってみます。
アルブミン値からわかること!
アルブミンの働きは主に2つ
アルブミンの働きは、①膠質浸透圧の維持、②物質の運搬の主に2つです。
①膠質浸透圧の維持
アルブミンは血管内の水分を保持する働きがあります。
アルブミン減少により膠質浸透圧が低下すると、血液中に水分を保つことができなくなります。
その結果、血管内の水分が血管外に出ていき、浮腫の症状が現れます。
血漿膠質浸透圧を維持するために治療に使われるのがアルブミン製剤です。
アルブミン製剤
出血性ショックや難治性の浮腫・腹水などの治療に使用されます。
アルブミンを血液中に直接補給することで、膠質浸透圧を維持→水分を血管内に保持→循環血漿量を確保することができます。
②物質の運搬
アルブミンが運搬しているものは、遊離脂肪酸、カルシウム・亜鉛・銅などの微量元素、甲状腺ホルモン、酵素、薬物、代謝産物など。
アルブミンと結合したままだとその物質の本来の働きをしないそうです。
アルブミン値で分かるのは、直近1ヵ月間の平均的な栄養状態
アルブミンの半減期は約21日(約3週間)。
今日合成されたアルブミン量をX個とすると、3週間後には大体その半分の1/2X個まで減少しているということです。減ったアルブミンに入れ替わって新しいアルブミンが合成されています。
入院時に測定したアルブミンは、3週間以上前に作られた古いものもあれば、1日前に作られた新しいものもあり、新旧様々。入院1ヵ月程前の平均的な栄養状態を反映しているといえます。
入院時にアルブミンが低く低栄養と判断できた場合、自宅での食事が長期的に摂れていなかった可能性が考えられる、ということです。
なぜ、毎週アルブミンを測定するのか
私が勤務する病院では、NST介入中の栄養不良患者のアルブミンは、1~2週間ごとに測定していることが多いです。
栄養指標となる血液検査項目の中で、比較的半減期の長いアルブミン。
半減期は3週間なのに、なぜ3週毎ではなく1~2週毎に調べるのか。
それは、何度か測定することで栄養療法の効果をみることができるからです。
他に上昇する理由がなければ、
「アルブミンが上昇している!栄養状態改善の兆しがみえてきたかも…!」
と考えています。
栄養療法の効果の判定は、アルブミンだけでなく、病態も考慮して多角的に行う必要がありますね
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