今回のテーマは輸液の使い分けについてです。
輸液の種類はなんとなく分かったけど、実際に病態を前にすると、どの輸液を使えば良いか迷っちゃうな。
このような疑問に答えます。
臨床現場で管理栄養士が輸液を選択することはないですが、輸液を理解することで、(この患者さんはこういう状態だからこの輸液が使用されているんだな!)と、病態の理解につながります!
輸液の選択は、NST専門療法士の資格試験でも問われます。
今回は以下のケースで使用する輸液についてまとめました。
- 「ナトリウム欠乏型脱水」で使う輸液
- 「水分欠乏型脱水」で使う輸液
- 術中のラインキープ時に使う輸液
- 救急外来でのショック患者へ使う輸液
- 経口摂取困難:3日程度は飲食禁止
- 経口摂取困難:3日以上の絶食が予想される
- 経口摂取困難:1週間以上、腸管の安静が必要
それでは早速はじめていきます!
脱水のときに使う輸液
ひとくちに「脱水」といっても、主に3種類あり、このような感じです☟
高張性脱水 | 等張性脱水 | 低張性脱水 | |
---|---|---|---|
状態 | 水分が電解質(ナトリウム)よりも多く喪失した状態。血清ナトリウム値、血漿浸透圧がともに高くなっている。 | 水分と電解質が同じ割合で喪失した状態。血漿浸透圧、血清ナトリウムはともに正常値を示す。 | 電解質(ナトリウム)が水分よりも多く喪失した状態。血漿浸透圧、血清ナトリウム値はともに低くなる。 |
症状 | 口渇、尿量減少、昏睡など | 血圧低下、尿量減少、脈拍数の上昇 | 脱力感、頭痛、倦怠感、傾眠 |
また、体液の組成バランスの変化によって、ナトリウム欠乏型脱水と水分欠乏型脱水に大別され、それぞれ処置が異なります。実臨床では、両方が欠乏していることが多いです。
「ナトリウム欠乏型脱水」で使う輸液
ナトリウム欠乏型脱水は、けがや手術などによる出血、嘔吐や下痢などによって、体液が喪失したことで起こります。循環血液量が減少するので、血圧低下➜めまい・頭痛・吐き気があります。
比較的急激に起きることが多いのが特徴。使用する輸液製剤は、
➜➜➜ 生理食塩液、乳酸リンゲル液 など
細胞外液のナトリウムなどの電解質が喪失するため、細胞外液の浸透圧が低下。細胞外液の水分が細胞内液に移動している状態なので、細胞外液に水分を補給する必要があります。
「水分欠乏型脱水」で使う輸液
長期間食事ができなかったり、長時間炎天下にいて多量に汗をかいたりしたときにおこります。細胞外液と細胞内液の両方が喪失した状態です。
血漿浸透圧が上昇➜口渇・尿量減少があります。さらに進行すると、意識レベル低下や昏睡などの症状が現れます。使用する輸液製剤は、
➜➜➜ 3号液(維持液)、5%ブドウ糖液 など
輸液は細胞外液と細胞内液に水分を補給できるものを選択します。
術中のラインキープ時に使う輸液
手術に向かう患者さんに行う輸液。
ラインキープの目的は主に2つです。
①横からすぐ薬剤を投与すること(いちいちラインをとる必要ない)
②術中に出血して血圧が下がるトラブルが生じた場合、輸液によって血圧を保てること
そんな輸液を選ぶポイントとしては、
- 血圧が上げられるように、血管内ボリュームを維持できるような輸液
- 急速に輸液する場合があるので、輸液にKが含まれていない輸液(K 4mEq/L位なら気にしなくてOK)
です。
使用する輸液製剤は、
➜➜➜ 生理食塩液、乳酸リンゲル液 など
ちなみに3号液(維持液)は、Na濃度が少なく、血圧を上げる力が弱い上にKが結構含まれているので術中のラインキープ輸液には適しません!!!
救急外来でのショック患者へ使う輸液
主な目的は、
①血管内のボリュームを維持して血圧を保つこと
輸液を選ぶポイントとしては、急速に投与する場合があるのでKが含まれていない輸液(K 4mEq/L位なら気にしなくてOK)であること。
使用する輸液製剤は、
➜➜➜ 生理食塩液、乳酸リンゲル液、1号液 など
食事摂取ができない患者へ使う輸液
どのくらいの期間食事がとれないかで、対応が異なります。
「嚥下障害があり3日程度は飲食禁止」の場合…
水、Na、Kの1日量を考えると、
➜➜➜ 3号液(維持液)2000mL/日
「3日以上は絶食が予想される」場合…
維持輸液ではカロリーが不足。3号液2000mLは1日200~400kcal。
➜➜➜ 一時的に経腸栄養に変更
「大腸がん術後の患者で、腸の回復に1週間以上かかる」場合…
経腸栄養は使えないので、ブドウ糖濃度の高い輸液を選択する必要があります。
PPNでは限界があるので、カロリーを優先して、
➜➜➜ TPNで栄養輸液を開始する
ちなみに…PPN→TPNへの移行のタイミングって…???
ちなみに、PPNを2週間以上行っている患者様。食事との併用でカロリーが充足できているとしたら、そのPPNってどう思いますか?
私は勝手に「PPNを2週間以上継続ってあまりよくないのかな?」なんて勝手なイメージがありましたが、充足しているのであれば、PPN継続して問題ないそうです。
1週間経過した時点で、食事からカロリーがとれず、PPN併用していても必要量とれていない・今後の見通しが立たないという場合は、2週間待たずしてTPNへ変更して良いようです。
参考にさせて頂きました!
1)Toshiaki Monkawa先生(@monmonmonmon)ユーチューブ
とても分かりやすいです!ありがとうございます!
2)輸液の基本と根拠(ナツメ社)
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